『医療ステップの次は、社会ステップ』
心の社会的発達支援

ADHD-COACH逐語録
録音されたセッション中の対話を、文字起こしをし、編集したものを掲載。
※下記の人物は、実際の利用者さまをモデルに作成した架空の人物です。
≪サンプルプロフィール≫
咲田 香奈 さん
神奈川県在住 28歳女性 一人暮らし システムエンジニア
診断(主治医の所見):ADHD 軽度 ASD傾向あり うつ病寛解状態
服薬:ストラテラ 40mg
●来所経緯
転職を2回経験。二年前にADHDの診断。うつ病の治療のため心理カウンセリングを半年受け、寛解状態に至る。その後、職場での特性の現れ方のコントロールを希望して、ADHD-COACHを利用開始。
【課題「ミスコミュニケーション」】
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S:それではさっそくご要望を伺っていきたいと思いますが、よろしいでしょうか?
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CL:はい。えーっと、どうしても職場でミスコミュニケーションが起きるんです。どうしたらいいでしょう。
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S:ミスコミュニケーション...、ですか。
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CL:はい、上司の説明をわかったつもりになっているみたいで。
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S:わかったつもりになっている…説明を。そう感じるに至ったエピソードをお伺いしてもいいでしょうか?
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CL:はい。私、システムエンジニアをしているのですが、その上司というのがプロジェクトリーダーで私の上司にあたります。いつもその上司に案件を任されたり、具体的な指示をもらっているのですが、その指示を取り違えてしまうことがよくあって…それに困ってます。
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S:上司の方からの指示を取り違える…取り違えになっていたと、わかったのはどのようなタイミングでしょう?
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CL:えーっと…。上司から案件をふられて、すぐに取りかかって、成果物ができて、その...、レビューっていうんですが、成果物を上司に見せているときに、「指示したことと違っていますよ」と言われて…。
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S:そこで、取り違いになっていたと、わかった?
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CL:はい。それで上司との面談中に、ついにそのことを指摘されて。
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S:取り違えることを指摘されたんですか。
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CL:はい。それで私が「主語や目的語を言ってくれないので間違うんです」と。
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S:咲田さんが、そうおっしゃったんですね。
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CL:はい。私的にはそうなんですが。つい言ってしまって。
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S:そうだったんですか。
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CL:はい。そしたら、上司が「そこまで毎回具体的に言わなくても通じるものだと思う」と言われて…。
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S:具体的に言わなくてもと…
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CL:はい。
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S:その上司の方が意味する”具体的に”というのは、”主語や目的語を伝える”ということを指してるんですか?
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CL:そうですね。私が取り違えるのは、主語や目的語の部分なので。
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S:そうか…。主語や目的語が上司と咲田さんの間で一致していれば、ミスコミュニケーションは解決できると…。
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CL:はい…。でも他にもあるんです。
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S:他にも…。
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CL:えぇ。会議室で上司と私と同僚とで、ある案件について打ち合わせをして、その後、自席に戻って作業を進めていて、疑問に思うことがあって上司に相談しにいったら、「打ち合わせで何を聞いていたの?決まったことと違うことをしているよ」と言われて…。
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S:打ち合わせで決まったことと違うことをしていた…。
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CL:はい。同僚はちゃんと打ち合わせで決まった通りのことをしていて、私だけが違うことをしていました。
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S:そうですか…。仮に打ち合わせのときに決まった内容をAだとして、上司と同僚の認識がA。咲田さんの認識がBだったと…。
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CL:そうですね。認識が自分だけ違っていたので、Aではないことをしていました。他にも案件を抱えていたので、時間的ロスになってしまいました。
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S:他にも案件を抱えているから、時間的ロスになるのは困ると…。
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CL:はい。本当にそうなんです。それで、実際に、納期が間に合わなそうになったこともあります。そのときは同僚たちに助けてもらってなんとかなりましたが…。
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S:実際に間に合わなくなりそうになったことがあるんですね…。
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CL:はい…。
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S:今思い出してみて、どのような気分がしますか?
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CL:今ですか。...今はソワソワ。落ち着かない感じですね。
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S:ソワソワ、落ち着かない。間に合わないと思った時も、今と同じような感じだったのでしょうか?
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CL:はい。今は落ち着くことができますが、職場では焦りがちですね。
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S:その、焦りがち、といったことも別テーマとしてセッションで見ていくこともできますが、どうしましょうか。
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CL:そうですね...。結構個人的に大切なことでもあると思うのでぜひお願いします。でも、今はミスコミュニケーションを優先させます。
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S:ミスコミュニケーションの方ですね。わかりました。焦りについては、ご要望の方に追加しておきますか?
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CL:はい。ありがとうございます。
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S:それでは話を、ミスコミュニケーションに戻します。先ほどまでのミスコミュニケーションのお話をこのように整理してみました。差異がないかご確認いただいてもよろしいでしょうか?
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CL:はい。わかりました。
(手書きでA4紙に書いたメモを見せる)
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CL:はい。整理されて、なんて言うんだろう…自分の状況が把握しやすくなりました。ありがとうございます。
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S:そうおっしゃっていただいて私も嬉しいです。それではこの内容をもとに、「目的の状態」について、ご一緒に明確化していければと思うのですが、よろしいでしょうか?
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CL:はい。
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S:目的の状態を明確化する際は、「~している状態」という肯定表現にしていきます。
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CL:わかりました。そうですね…。「プロジェクトリーダー、私の直属の上司ですね。その上司の伝えようとするイメージと、同じイメージを持っている状態」。こういう感じでしょうか?
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S:うん、とてもいいですよ。「何についてどうなっているか」や「誰が誰と」という表現が明確化されているので、とても具体的ですね。
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CL:ありがとうございます。そうだな…あとは、任された案件について、自分とプロジェクトリーダーでイメージした内容が一致している状態ですね…。
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S:いいですね。イメージした内容が一致している…。
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CL:はい。「誰が、何をどうするか」と「どこで」と、あと「いつ」これは期限や優先順位ですね。
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S:おお、具体的でいいですね。そういった部分が一致していれば、イメージが一致していると言えそうですね。
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CL:はい。あとは…(沈黙30秒)
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S:どうなっていたら、「同じイメージを持っている」と言えそうでしょう?
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CL:成果物についてのレビューを、プロジェクトリーダーからもらうときに、「こういう認識であっていますか?」と訊いて、プロジェクトリーダーから「YES」の反応がある。
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S:とてもいいですね。「YES」の反応があるというのは、これで合ってるよとか?
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CL:そうですね。
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S:客観的にわかるものを目的の状態にするのは、とても建設的なんです。そこを目指しやすいので。
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CL:そうなんですか…。偶然ですが、よかった。
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S:その調子でいきましょう。先ほどの「YES」の反応についてですが、これはレビューをもらっているときに「違うよ」と言われるのが「NO」の反応ということでしょうか?
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CL:はい。単純にYESかNOかで。
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S:わかりやすくていいと思います。現状では、そのNOの反応はどのくらいの頻度でありますか?
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CL:10回中6回ですね…。
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S:うん。数字を使うのも客観的でいいですよ。それでは目的の状態では、NOの反応は10回中何回になっているでしょう?
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CL:そうですね。10回中1回で、YESで言うと9回が現実的かなと。
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S:現実的なので、早く解決できそうですね。
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CL:そうか…。現実的になっていれば、そうですよね。
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S:いい感じですね。ちなみに、さきほど「同僚はちゃんと打ち合わせで決まった通りのことをしていて、自分だけ違うことをしていた」というお話があったかと思うのですが。
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CL:あぁ、そうですね。MTG中も同じ認識でいたいですね。
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S:同じ認識でいる、その相手はどなたにしておきますか?
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CL:あー、明確化という意味では...、いつも上司はその席にいるので、上司にしておきます。チームのメンバーは、結構入れ替わりが激しいので。
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S:入れ替わりが激しいから、いつもMTGにいる人物として、上司ということなんですね。Goalとして設定するにはとてもいいですね。
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CL:はい。それに結局レビューしてもらうのは上司なので。
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S:それでは、今までお話したことを表にまとめてお送りしますね。
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CL:はい。ありがとうございました。
~振り返り送信内容:GROWモデルのシート「G」+GROWモデルのシート「R」ギャップの確認~


【「課題の特定」と「対処策づくり」】
<注意集中ワーク&一週間の振り返り後>
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S:前回の内容をお送りしましたが、内容に間違いはなかったでしょうか?
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CL:大丈夫です。本当にわかりやすくなりました。
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S:よかったです。それでは今日は、認識・イメージが一致しているとき、一致していないときをそれぞれパターン化していきたいと思います。
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CL:パターン化…。
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S:はい。試しに少しやってみますか?
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CL:はい、お願いします。
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S:前回、成果物のレビューをもらって、「YES」の反応と「NO」の反応についての頻度を出しましたよね。
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CL:そうでしたね。
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S:レビューをもらって、10回中6回は「指示内容と違うよ」と言われる。
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CL:はい。
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S:残りの4回はYES。
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CL:そうですね。
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S:この4回は指示されたことと一致している、ということでしょうか?
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CL:はい。
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S:一致できたのは、なにか理由がありそうですか?
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CL:その4回というのは、単純に経験として慣れたものってだけです。なので、すぐにイメージが一致するんだと思います。
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S:経験していて慣れていることだったから。
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CL:はい、そうです。
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S:その経験はいつ頃の?
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CL:入社してだいたい6ヶ月くらい経ったときのものですね。
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S:6ヶ月の経験…。その間は、イメージをどのように一致させていたのでしょう?
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CL:指示をもらって…、まだ新人だったので、メモに一度書いて整理していました。
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S:メモに一度書いていたんですね。どのような内容を書いていたのでしょう?
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CL:最初に上司の指示として言われた言葉を紙に書いて…。文字だけだとうまく理解できないので、図解に落として整理していました。
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S:ほぉ…。一度文字にして、それを図解に整理していた。それで指示内容と一致していたと?
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CL:はい。作業に入る前に上司へ確認をしに行って、それでOKをもらって、作っていました…。あ、そうか一度書いてみればいけるかも…。
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S:一度書いて、確認を取る。そうやってOKをもらって経験を積み重ねてきたんですね。
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CL:はい。またやってみようと思います。
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S:いいですね。またやってみてのフィードバックを次回のセッションで伺えたらと思います。
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CL:はい。
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S:ちょっと気になったことを私の方から質問してもよろしいでしょうか?
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CL:えぇ、大丈夫ですよ。
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S:その一度書いて、図解で整理するというのは、最近はされていないものだったのでしょうか?
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CL:そうですね。慣れてきたり、忙しくなってきたりしているうちに、やらなくなってました。
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S:そうだったのですか。
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CL:はい。まぁ、今振り返ってみると、やらない分、認識のズレは増えていったと思えますね。
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S:振り返ってみると、というのは素敵な気づきですね。教えていただきありがとうございました。
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CL:そうか…。これが気づきか…。
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S:はい。ちなみに、事前に確認質問をする、というのもしなくなりましたか?
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CL:そうですね。今では指示を受けたらすぐに作業に取りかかってました。
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S:すぐに取りかかっていたんですね。
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CL:はい…。今ちょっと話していて思ったのですが、事前に上司と私のイメージが一致していれば、認識違いでムダな時間を失うこともなくなるし、成果物へのレビューも「違うよ」と言われなくなるのかなと。
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S:おぉ。すごい気づきですね。もっと伺っていいですか?
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CL:はい。新しい案件について、上司の成果物のイメージがAだとして、私の認識もAなら、認識がズレていないので、成果物のレビューもYESがもらえます。もし、私の認識がBなら、成果物のレビューがNOつまり違うよと言われます…あぁ、これはどうでもいいか。
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S:とっても大切なことをおっしゃっていただいたと思いますよ。今、紙に書いて整理してみますね。

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S:こういうことでしょうか?
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CL:はい。そうか…事前に成果物のイメージの認識を一致させてしまえばいいのか。
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S:うん。事前に一致させてしまえばいい…それはどのようにして?
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CL:成果物を作る前に、一度書いて図解で整理して、それを箇条書きにして、上司に確認を取ります。
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S:おぉ…とても建設的な対処策だと感じます。書いて、図解して、箇条書きも…。
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CL:はい。そうだな…。実際に着手してみないとわらないこともあるから、整理したら、少しだけ着手して、やる必要のあること、疑問点をメモして、もう一度図解をしてから箇条書きして、それを上司に示して確認を取ります。
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S:そこまでやれば事前に一致できそうですね。
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CL:はい。もしそこで一致してなくても、図解や箇条書きされたものを一緒に見ながら、どこが一致していないのか、上司が指摘してくれると思うので、またそこで一致させていけると思います。
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S:図解や箇条書きを見せながら一致をはかれると...。とても建設的ですね。素晴らしい考えだと思います。
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CL:はい、ありがとうございます。なんだかスッキリしました。
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S:スッキリした...。いいですね。ちなみに、一致していないとき、図解や箇条書きを見せて指摘をもらうというのは、指摘された内容は図解に反映させるということでしょうか?
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CL:あぁ、そうですね。指摘を一度もらって、改めて図解や箇条書きを書いて、もう一度上司に確認しにいきます。
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S:なるほど。それなら認識を事前に一致させて、作業できそうですね。
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CL:はい。このように整理していただけたので、集中して考えられました。
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S:先ほど咲田さんが、おっしゃっていたことを私は整理しただけなのですが、(表を見せながら)この「事前に認識が一致していれば、レビューはYESの反応がもらえる」という部分。これは“本質的な課題の明確化”と言って、解決のためのポイントが絞れるのです。なので、とても大切なところを咲田さんがおっしゃったと思い、このように書いてみました。
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CL:本質的な課題の明確化…。確かにここがハッキリすれば、あとは楽でした。
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S:うん。とても素敵な発想でしたよ。改めて、対処策を整理するために明文化しておきますか。
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CL:はい。

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S:このようなフロー形式にしてみたのですが、いかがでしょうか。
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CL:あぁ、感動しました。この方が実際にやるときに便利だと思います。
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S:実際にやるときに。なるほど。実際にやるときを想定されたのですね。素敵な着目の仕方だと思います。それと、もう一つ、このようなものを書いてみました。

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CL:あぁ、シンプルでわかりやすいです。
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S:ありがとうございます、先ほど書いたチャートをより具体化したものです。咲田さんが特定された“本質的な課題”の部分のみに限定した内容になっています。
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CL:そうか!この「行動」に書かれている対処策のところに、さっき私が話した対処策が入るんですね。
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S:はい。その通りです。
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CL:YESの回数が増えるといいな。
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S:回数に着目するのは、いい視点ですね。どんなときにYESが増えるかわかりやすくなると思います。
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CL:ちょっと楽しみになってきました。この対処策は、まだ試していないし、やってみてまた気づくところもあるだろうから、より良く、改良していきたいです。
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S:咲田さんのお話を聞いていると、私も楽しみになってきました。次回のセッションで対処策を使ってみてのフィードバックをお聞かせください。
【「対処策フィードバック」】
<注意集中ワーク後>
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S:それでは本日もよろしくお願いします。
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CL:お願いします。
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S:2週間ぶりですかね?
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CL:そうですね。
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S:それでは2週間の振り返りから入りたいと思いますが、よろしいでしょうか?
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CL:はい。
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S:何か気になったことや気づきなどございましたら、お聞かせください。
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CL:はい。えーっと、前回ここで作った対処策を職場で使ってみたのですが、
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S:確か、一度書いて図解するというものでしたね。
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CL:ええ。最近上司と面談があって、認識が一致してきているねって言ってもらいました。
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S:おお!やりましたね。
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CL:はい。最近上司から案件を任されるときに、「この案件の詳細を読んで、どう進めるのか図解整理してから、私に確認して」と言われるようになりました。
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S:上司の方も図解で整理することを認めてくださっているのですかね。
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CL:ええ。よく指示と一緒に言ってくるのでそうかもしれません。
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S:よかったですね。
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CL:はい。でもまだ認識がズレたりして使えないときがあって…。
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S:そうですか…。認識がズレるとき…。どんなときに使えないのでしょう?
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CL:んー、急ぎのときですね。
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S:急ぎのとき?
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CL:はい。同じチームの同僚と連携しているときだったのですが、MTG後すぐにその同僚にファイルを送る必要が出てきて、本当はMTG内容を整理したかったのですが、相手を待たせていたので…。
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S:図解する余裕がなかった?
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CL:そうです。余裕がなくて…。なので、その後の作業は精度が落ちましたね。
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S:余裕がないことで、精度が落ちたと。
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CL:はい。ミスが発覚したりしてテンパりました。
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S:そうですか…。
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CL:何をしていいかわからない状況になりました。
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S:そのときのご様子としては少し焦っていた?
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CL:はい。結構焦っていて。
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S:焦っていたんですね。
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CL:ええ。他にはMTGのときですね。
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S:認識のズレが起きるのが?
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CL:はい。話を聞きながら、書くということができないなと。
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S:あぁ、MTG中に誰かが話している内容を耳で聞きながら、その内容をメモしていくと。
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CL:はい、そうです。同時にこなすのがどうも…。これもADHD特性でしょうか?
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S:ADHD特性の脳では、1つのことに集中して取り組むことに特化しているので、逆に「聞く」「書く」の2つの処理を脳にさせるのは大変かもしれません。
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CL:やっぱりそうか…。
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S:今、対処策が使えない状況について見てきましたが、使えるパターンではどのようになっているのでしょうか?
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CL:そうですね…。上司からYESの反応がもらえたときは…、「自分から確認しにいく」というパターンでした。
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S:あー、自分から。
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CL:はい。今振り返ってみると、自分から確認しに行くときは、自分のペースでできるので、書いて整理する余裕がありました。
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S:そうですか。自分のペースだと余裕があるんですね。
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CL:ええ。あと今話していて気づいたのですが、MTG中、相手の話を最後まで聞いてから、図解を書くというパターンもありますね。
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S:おお。うまくいくパターンとして、相手の話を一度最後まで聞いてから、その内容を図解にすると。
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CL:はい。あー、そうか。だからMTG中は、認識がズレたのか。
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S:また何か気づかれたんですか?
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CL:はい。うまくいかないパターンでは、「聞く」と「図解を書く」を一気にやろうとしていました。うまくいくパターンでは、聞き終わってから、図解に整理していました。
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S:おー…。同時にやろうとするとうまくいかない。1つ1つに分けるとうまくいくパターンになると。
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CL:はい、そうなんです。同時に一気にやろうとすると、相手が話していた内容が変わってしまうことがよくありました。
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S:内容が変わってしまう。
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CL:ええ。MTG中に、決定事項がAからBに変更されて、MTGが終わると、自席で自分のメモを見るとAに決まっているという内容のままなんです。あとで、同僚と話していて指摘してくれたので、Bに変更になったとわかったのですが。
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S:ふーん、Aのまま。
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CL:はい。そういったことがよくありますね。「聞く」と「書く」を一気にやろうとすると。
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S:一気にやろうとすると認識のズレが起きるんですね。
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CL:そうなんです。だから、別々にやればいいのか…。
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S:別々にやるというのは、認識を一致させるためにも大切そうですね。
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CL:ええ、また試してみます。

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CL:あとは、焦っているときはミスをしがちなので、そこですかね...。
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S:焦っているときにですか...。
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CL:はい。
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S:焦っているときは、必ずミスをしていそうですか?
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CL:そうですね。慌てて作業にとりかかって、たいてい必要なことではないことをしていたり。...でも必ず、というわけではなさそうです。
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S:必ずではなさそう?
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CL:はい。一度トイレに行ったり、オフィス出て飲み物を飲んだりしてから、自席に戻って作業にとりかかると、「あ、そうだ」って感じで、気になったことや思い出したことについて上司へ確認質問しに行ったりしていて。そこでミスやダブりを未然に防いだり、認識違いに気づきます。
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S:一度席をはずして、トイレ行ったり、飲み物を飲みにいったりすると。
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CL:はい、そうですね。ミスしていても気づけたり。...なんというか余裕が出てきますね。
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S:おお、余裕が出るんですね。
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CL:はい...、そうか。余裕がないときは、自席から一度離れると、その後の作業の精度がよくなりそうですね。
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S:そうですかぁ。対処策として使えそうですか?
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CL:ええ。やってみます。
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S:いいですね。次回の振り返りのためにも明文化しておきたいのですが、席を離れて向かう先は、どこにしておきましょう?
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CL:そうですね...。トイレと自販機ですね。
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S:自販機はオフィスの同じ階にあるんでしょうか?
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CL:はい。トイレに行ったついでに寄れるところですね。
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S:ついでに寄れるところになるんですね。
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CL:はい。結構近いです。
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S:ちなみに先ほど「あ、そうだ」と確認質問しに行けるほどの余裕が出たというエピソードがあったと思うのですが。
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CL:はい。ありました。
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S:その時はトイレに行ってついでに自販機に寄って、飲み物を飲んだ。そういった一連の行動になるのでしょうか?
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CL:えーっと。そうですね。トイレに行ってから、その次に自販機で飲み物を買って、その後ラウンジスペースで飲み物を飲んでました。
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S:ラウンジスペースがあって、そこで飲んでいたんですね。
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CL:はい。ラウンジも同じ階になるので。
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S:今回の追加の対処策でも、「トイレに行く。次に自販機で飲み物を買う。その後ラウンジで飲み物を飲む」この手順にしますか?
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CL:そうですね、そうしておきます。たぶん3箇所くらい回った方が、自席に戻った時に余裕が出やすくなると思うので。
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S:3箇所回った方が余裕が出やすくなる。いいですね。
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CL:はい。
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S:ちなみに、この3箇所行って、自席に戻ってくるまでは、どのくらいの時間になるのでしょう?
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CL:んー、いつもは10分ですね。
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S:10分ですか。その10分で作業精度があがるなら、大切な10分になりそうですね。
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CL:確かにそうですね。焦ってムダな作業をして、結果「違う」と言われるまでに失う時間に比べたら、対処策の10分はかなり大切な時間、効果的な時間になりそうです。
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S:大切な時間、効果的な時間。いい表現ですね。それではせっかくなので、「~になったら、この対処策を使う」というところまで明文化しますか?
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S:あぁ、そうか。いつ使うかまで決めておけば、対処策自体を忘れるってことが防げそうですね。そうだな…。焦りがちなのは、MTG終わってすぐ作業にとりかかる時と、上司に突発的に発生した案件を最優先でやるよう指示された時ですね。
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CL:今やっていること、一旦中断して、コレやって。みたいな?
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S:そうそう。本当そんな感じで。
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(図 あせりやすいシーン)

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S:パターン化すると、このようになりますか?
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CL:はい。この2つのシーンがあったら、さっきの10分間対処策を使ってみます。
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S:10分間対処策は、覚えやすいネーミングですね。
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CL:ええ。単純に短い方が思い出しやすいので。
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S:思い出しやすいと、使いやすいですよね。とても素敵な発想だと思います。
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CL:ありがとうございます。
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S:それではまた次回、フィードバックをお聞かせください。
(⑤図 焦りやすいシーン)

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S:それでは本日も、フィードバックを伺っていきたいと思います。よろしいでしょうか。
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CL:はい。まず、10分間対処策は私にとっては、とても良かったです。
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S:良かったですか。
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CL:一度離席してから、作業に戻ると、図解も冷静にできるようになったんです。でも、それより大きいのが、自分のミスに気づけたり。ミスやモレを事前に見つけられるようになったことですね。
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S:事前にミス・モレに気づいたり、見つけたり。すごいですね。
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CL:私にとっては、本当によかったです。まぁ、私の体験から作られたものなので、当たり前なのかも…
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S:そうですね。咲田さんオリジナルの対処策ですね。ちなみに、認識のズレはあれから減りましたか?
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CL:あぁ、その対処策を使うようになってからは、認識のズレが起きていません。無駄なことをしたりして結局違うってことになってたときは、時間的ロスもそうですが、体力的ロスも結構あったと思うので。本当に前とはだいぶ仕事が楽になりました。
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S:仕事が楽になった。そうれは素敵なことですね。
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CL:はい。おかげさまで上司にも「最近とても成長しているようにみえるよ」って言ってもらえて。
【その後】
咲田さんの「ミスコミュニケーション」という課題は、3週間連続で発生せず、認識が一致した状態が継続されたというフィードバックがあり、この課題は解決となった。そして、注意集中ワークの継続に加え、感情筆記のワークを取り入れつつ、また次の課題にとりかかった。